〜 '99 鈴鹿8耐 奮戦記(起承転結の「起」編) 〜


 ワークスをはじめ優勝を狙うチームや、プライベータートップを狙うチームもいる。ぼくらは順位はともかくまず完走が第1目標。

 参戦目標はいろいろあっていいと思うし、ぼくらはぼくらのやり方で完走を目指し、8耐を楽しむ。楽しむことにかけてはどこのチームにも負けないつもり。

 できることなら少しでも多くの人に応援していただきたいし、8耐の面白さも伝えたい。さらにみんなで感動を分かち合えれば...


「#42 スポーツライダー&Eフリークス 松島/岡田組
                     148Laps --Did Not Classify 」

 このリザルトを見ただけでは、「ふーん、ダメだったのかな...」だけで終わってしまう。

 転倒、修復、再スタート...そしてチェッカー。8時間のあいだに様々な事があり、いろいろな思いが巡る。ライダーにもピットクルーにも、観客にも。

 そんなこんなで、テレビや雑誌・リザルトだけではまず知ることのできない、ぼくらの奮戦記です。

第1ライダーの松島が目一杯主観的(そのほうが面白いかなと思って...)に書いています。ご了承ください。


出場決意〜レースウイーク直前


 相棒の岡田聡に「R1で8耐をやろう」と誘われ、初走行で転倒・負傷。1年半のブランクの上に2ヵ月マシンに乗れないという波乱のスタート。

 その後も練習に行こうとすれば雨。復活一発目の走行も雨。ドライのフルコースでの走行ができないまま、7月に突入してしまった...。こんなの初めて。

 最初で最後となってしまった鈴鹿フルコースでの練習走行で、ちっともタイムが出なかったので、これは現実問題として予選突破も危ういか...?
 予選落ちするのはS-NKクラスではわずかに4台程度。これには入りたくないなぁ...でも可能性は高いような...。

 とにかく信じるしかない。決勝に向けての準備もしない訳にはいかないし。行けると思って行かなければ行けるものも行けないし。
 さぁどうする?


などなどの、8耐ウイークを迎えるまでの話はDIARYで。
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「フラワー」を口ずさみながら...
 マシン作りは岡田が、睡眠時間を削って、休日はフルに使ってがんばってくれている。
 ピットクルーのみんなも同様いろいろがんばってくれている。もちろん自分も。

 でも、苦しいことばかりじゃない、がんばってる君も僕もいるんだから、8耐出場&完走の夢を叶えよう、愛の花(モーホーぢゃないぜ!)が咲いた時(チェッカーを受けて花火が上がったら)みんなで喜びを分かち合おう!

 kinki kidsのフラワーって妙に8耐にマッチしてると思いませんかぁ?



レースウイーク突入!


 最小限の荷物を持って、1BOX2台で鈴鹿入り。
 まだ現地入りしてからやらなければいけないマシンの整備も残っている。

 毎年火曜・水曜と練習走行の予定が入っていたのだが今年はない。木曜一日だけ。1時間の走行が3本。


 まだまだテストしなければいけないこともあり手探りの状態。それで練習日が一日だけは正直きつい。

 果たしてタイムは詰められるのか!? イメージトレーニングの効果は?
 走り方を変えて行かないと行き詰まってしまいそうで怖い。

 さて予選組はどっちだ? スペンサーと同じ組がいいなぁ...。


モバイル部隊と留守番部隊
 ホームページを使ってなんとか情報を伝えたい。。。これが今回の課題であり目標。

 テレビ中継があるとは言ってもCSを見られる人はまだ少ない。それにぼくらのようなチームが画面に登場するのは、せいぜいトップグループにラップされる時だろうし、たまに出る順位表で走っていることが確認できる程度。

 それではどうやってぼくらの動きをみんなに伝えるか?
「今、何周目を走っているのか? 何位なのか? 次のピットインはいつごろか? ペースはどうなのか? マシンの調子は? コースは? ライダーのコンディションは? 作戦は? etc...」

 正直なところ、耐久レースはピットにいるのが一番おもしろいと思う。
 最近はピットモニターで、順位やタイム、前後のライバルとの差もリアルタイムでわかる。それによって作戦を変えてみたり、ライダーにゲキを飛ばしてみたり。また、ライダーからじかにいろんな話も聞けるし、ピットインの時には緊張感が走る...。

 テレビ等でも、どこかのチームやライダーに焦点を当てた(かつてのチームシンスケのような)ドキュメント物みたいなほうが、グッとくるものがありませんか?

 そこでモバイル部隊にご出動願ったというわけ(モバイル部隊の到着までは留守番部隊が出動!)。
(モバイル部隊については後述)

 実はあまりにもピットのほうが準備不足だったために、情報をうまくモバイル部隊に伝達できず、おまけに転倒まであって...(こういう時ほどうまくやれれば...とちょっとハンセイ)。

 そんな状況下、できる限りのことをモバイル部隊(と留守番部隊)にやっていただきました。(もちろんボランティアで...多謝)
 その記録が↓の「リアルタイム記録」です。(みなさんからのメッセージもそのまま掲載してあります。)


8耐公式練習までのリアルタイム記録その1(水曜・木曜編)です。
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 予選組はA組。S-NKは強者揃い。おまけにスペンサーとは別組。練習走行から組分けされるので一緒に走るのは決勝。絶対に予選落ちするわけにはいかん!!

 公式練習一発目。いきなり約3秒タイムアップ。ちょっと安心。それでも21秒後半。20秒は切りたい。(当初は18秒はすぐに出ると思っていた...)

 2本目セッティングを少し振ってみた。が、失敗。タイムは上がらない(まぁ言わせてもらえば、直後に車検を控えていたためコケたり壊したりしたら大騒ぎになってしまうので、やや心理的リミッターが働いた模様)。

 3本目。車検も無事通過したことだし、タイヤを新品にして思い切って行ってやろう、のはずがまたもタイムアップできず。どうも疲れが...。

 翌日の予選は体が新鮮なうちの午前のセッション(それも前半)が勝負だな。午後は路面温度も上がるしね。
 まわりを見てみれば、どプライベーターはどんぐりの背比べ状態で、どうやら仲間うちで予選通過ラインの攻防になりそうな気配。


 こうして鈴鹿の木曜の夜は更けていく。
 明日はいよいよ予選。期待と不安。



予選の攻防


 7/23(金)、公式予選。
 天候は晴れ。今日も暑くなりそうだ。
 いよいよ8耐も本格的なスタート。各ピットとも昨日までとは違い、なにかピリピリしたムードがある。

 予選A組第1ライダーは午前9時20分のスタート(30分間)。
 ぼくらのピットもマシンのチェックに余念がない。ライダーは集中力を高めていく。


[ リアルタイム記録その2〜予選編 ]
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 真っ先にコースインして幕を切ってやろうと思っていたが、腕章を付け忘れピットに戻される#52の及川君に行く手をさえぎられ作戦失敗。

 前半勝負を頭においてタイムアタック。少しずつタイムを削るが思ったほど上がらない。
 11周目、2'20.882。もう少し、と走り続ける。

 残り1分をコントロールタワーで確認。あと1周だ。最後のアタック、1コーナーへ。
 ところが...。

 130Rを立ち上がろうとしたらマシンが失速! おやおや??
 そのままシケインまで行くがエンジンストップ。「ガ、ガス欠だぁぁあ」

 何秒出たかはわからないけど、これは痛いっ。いい感じだっただけにちょっと悔やまれる。



 第1ライダー1回目は 2'20.882 でA組総合27位(クラス10位)。
 このままなら問題はない。しかし、#21の新垣選手はマシントラブルでアタックしていない。#1のダグポーレンも出走していない。#50の加藤義昌選手もトラブッているようだ。


 果たしてA組ではS-NKは何台が決勝進出するのか?(全体では25台なのだが...)
 もし予選を落ちるのが2台ずつとなれば、これは油断ならない。後がない。

 ぼくらのすぐ前は20秒338の#76 柳本選手。その前(S-NKでは)になると#52の及川選手の17秒595。これは簡単には届きそうもない。ターゲットは#76だな。水曜の夕食を共にした仲間だが、予想通りの展開。
 それに何が何でも20秒は切っておきたいし。

 ペースが上がったせいか、気合いのせいか、エンジン右下に付けたクラッチのレリースガード(樹脂製:オートスタッフスエヒロで作ってもらった)左側はジェネレーターカバーが接地してしまう。
 S字では接地した瞬間にガッとアウトへ逃げる。危ないよな。


 第2ライダーの岡田は松島の使ったタイヤのまま予選出走。
 バンク角を稼ぐため、車高調整(これまたスエヒロ製の一品もの)で若干車高を上げ、岡田に様子を見てもらうことに。

 岡田の1回目の予選は2'24.709で終了。
 #1 は森選手が出走して15秒台。#21の戸田選手はまだ走れず。#50の山本選手もトラブルは解決していないようだ。

 勝負はやはり午後に持ち越し。
 午後の予選では1度ピットインし、セッティングを変えるなり、気合いを入れ直すなりして再アタックする作戦にする。


 「誰が予選トップタイム?」「知らん」「加藤大治郎が8秒台?」「ふ〜ん...」
 そんな感じ。自分たちのことで精一杯。




 第1ライダー予選2回目。
 ベストを更新できずに周回を重ねる。

 #21の新垣選手は復活して15秒252。#50の加藤選手も19秒台に突入。後ろには#57だけになってしまった。

 中盤予定どおりピットイン。

 ピットに戻ると岡田に「加藤選手が19秒台に入った」と聞かされた。#21が復活したことも。むぅぅぅ、もうひと踏ん張りせにゃ。
 柳本くんのタイムは上がっていないらしい。まずはここをやっつけよう。

 再びコースイン。徐々に上げるがまだ届かない。
 その時サインボードに「UP」の文字が! 「うんにゃろ〜!!!」


うんにゃろ〜の走り
うんにゃろ〜!の走り


 ラスト2周。2'20.38 まで上げる。が、まだ0.05秒届いていない。最終ラップへ。
 チェッカーが出る。マシンがコントロールラインを通過。タイムは...?

 モニターに表示されたタイムは 2'20.236。
 #76はタイム更新ならず、0.1秒差で逆転!

 これで予選通過はほぼ確実となる。
 ピットでは「やった〜!」の声が上がる。


経験が大事な耐久レース
 今回のピットクルーはみんな8耐初体験。松島は5回目。いろいろノウハウ(たいしたものではないけれど)を伝授しながらのレースでした。

 レース前の準備から、レースウイーク中の注意事項、時間配分、決勝中の作戦等々があるわけですが、8耐となれば他の耐久レース以上に経験が大切になってきます。

 そこで耐久経験者も少ないのでRacing Garage ASP.の足立さんに助人を依頼(観戦がてら、と快く引き受けてくれましたが、後に大活躍することに...)。

 さてそんな中、上記の「UP」サイン。
 「うんにゃろ〜!!」には、もちろん自分にムチを入れる意味もありますが、サインマンへの「おのれ〜、目一杯走っとるわい!」という気持ちもありました(笑)。

 でも結果としてそれでタイムアップしたので、実は大正解だったのでしょう(爆笑)。


 予選終了後ピットへ戻ると「よっしゃ〜」と迎えられる。「お、19秒台に入ったかな?」
 #76を逆転したことを聞かされ、まずはホッとした。20秒は切れなかったけど...。

 予選さえ通ってしまえば、決勝は作戦どおりに着実に行くだけ。
 「とにかく重大な責任は果たせた。良かった〜。」これが本音です。

 スポンサー様にも、応援してくれる人達にも、ホームページを見てくれた人にも、ピットのみんなにも、そして岡田にも、これでなんとか申し訳がたつ。
 決勝に向けてしてきた準備、モバイル部隊もこれで無駄にならない。ほっ。


 第2ライダーの2回目。
 岡田には無理をしないよう言い聞かせる。例によって松島の使ったままのタイヤでコースイン。


 「決して無理したわけではないんだよ。」
 「それなりに走っていたら23秒に入ったし、そろそろ切り上げてしまおうか?なんて考えていたら...」


 「ゼッケン42番、ヘアピンで転倒!」
 実況のみし奈さんの声が響く! ピットは色めきだつ。

 ヘアピンだからハイサイドとかで吹っ飛んでいなければマシンは大破はしていないはず...ライダーは?
 すぐに夜間走行(義務)も控えているので、マシンが大破してしまうと修復不可能。ましてや補欠ライダーは登録していないので怪我をしてたらもっと大変。

 モニターを見るがヘアピンで姿は見えない。
 しばらくすると自走で、申し訳なさそ〜にピットまで戻ってくる。大事には至っていないようだ。ピットクルーも安堵する。


恥ずかしい写真
岡田転倒後の恥ずかしい写真

 損傷はカウリングとステーが少々。ライダーにも怪我はない。
 一瞬の集中力の欠如でヘアピンでコースアウト→グラベルに足を取られ転倒、とのこと。

 夜間走行までの2時間をマシンの点検と修復に費やす。





 A組の予選結果ではS-NKクラス11位。正式結果は出ていないが、どうやらA組では12台が決勝進出らしい。#76も予選通過だ。

 SP4耐のフリー走行、補欠ライダーの予選(結構な顔触れ)の後、午後6時15分から7時30分までが夜間走行である。

 晴れでも最後の15分は真っ暗になる。慣れておかないと本番で面食らう。これも経験。
 松島と岡田が2回ずつ乗ることに。


華やかなスタートライダーと感動のゴールライダー
 8耐でもっとも華やかなのはやはりスタート。スタートライダーにとっては晴れ舞台。

 一方もっとも感動的なのはゴール。ゴールライダーにはパレードラップもあり、無事にチェッカーを受けられれば、これほど感動できることはない。

 ぼくらの作戦は、燃料タンクが小さいこともあり、9ストップ10セクション。これだとスタートライダーはゴールを担当しない。奇数にしてしまうとスタートライダーはゴールも担当でオイし過ぎ。

 で、松島は一度ゴールライダーを経験している(めっちゃ感動しました)ので、これは岡田に経験させてやろう(ってゆーか、華やかなスタートライダーは譲れないぞ)ということで、松島がスタートを勤めることになりました。



 ここからは全てが「決勝へ向けて」となる。

 ゴール担当は岡田なので、夜間走行も一番暗い最後の時間を走らせる。
 夕闇にヘッドライトが映える。


 ほんとに見えないんですよ。特にデグナーから先の西コース。
 ライトが付いてると言っても(カウルの左側についているから)左コーナーでは目の前を、右コーナーではあさっての方向を照らしているだけで、ポジションライトとしての役割くらいしかない。

 自分は夕暮れ時を走る。西日が眩しい。
 決勝もこの時間までちゃんと走っていたいなぁ。

 ゴールライダーのパレードラップは感動的。でもピットでみんなと迎えるのもまたいいもの。
 あぁ絶対に完走するぞ!!


 夜間走行終了後は周りのものをサッと片付けて撤収。
 決勝に向けての準備は明日。スペシャルステージ〜前夜祭の時にやることにする。

 夜はみんなで乾杯。まずは無事?予選通過を祝う。





 7/24(土)SP4耐とスペシャルステージの日。
 今年のスペシャルステージは計時予選上位20台による。

 もちろんぼくらには関係ない。
 午前中は4耐を観戦するなり、お土産を買うなりして、みんなが思い思いに過ごす。

 ピットウォークでは毎年恒例ヘルメットの展示会。
 友人やインターネットで知り合った人たちの訪問を受け、決勝に向けての抱負を語りつつ談笑。

PITWALK
KISSカラーのR1と99仕様の松島メット(馬頭星雲)。
左:松島 右:岡田


ピットワークコンテスト
 今回初の試み。それはピットワークコンテスト出場。

 KTCの協賛で毎年行われているけれど、参加するのは初めて。
 メカニックにも晴れ舞台を、ということと、経験を積ませるためにエントリーしてみました。

 参加チームは10チームくらい。
 で、ピットの位置的になんとぼくらは先頭バッターに(1コーナー側から始める)。

 しかし、事前の練習は30分しかしていない。恥をかくかもしれないけど、逆にそれを楽しんじゃえ。

 人垣に囲まれ、場内放送の実況付で、緊張の中コンテストは終了。
 結果(順位)はよくわからないけど、時間は58秒だったかな。(土曜の夜には半分くらいでできるようになりました。)

 もっと他のチームも参加すればいいのに。


 午後からは整備。のはずがあまり進まない。
 事前にしておくべきこと(できること)ができていなかったせいもあって、あれやったりこれやったりしているうちにスペシャルステージも終了。

 そうこうしているうちに、グランドスタンド前では前夜祭が始まる。
 タイヤ交換の練習はこれからだ。


悪い見本
 有力チーム、8耐慣れしているチームの土曜の夜は早い。
 逆にプライベーターで8耐経験の少ないチーム、準備に時間の取れなかったチームは、現地でやることが多くなってしまう。

 土曜の夜、遅くまでタイヤ交換の練習をしていたり、サンダーでガーガー削っている音が鳴り響いていたり。
 ぼくらも然り。

 結局、タイヤ交換の練習を始めてから、これがダメ、ここをこうしておいたほうが...となってしまって、夜12時で無理やり切り上げるまで作業が続いてしまった。

 やっぱりサーキット入りする前にきっちりやっておいて、現地ではピットロードの傾斜やエアツール・スタンド等の確認と、若干の練習で済むくらいでないと。翌日、レースは8時間もあるんだし、その日のうちに帰途につかねばならないスタッフだっているんだし。

 てなわけで、今回のぼくらは悪い見本です。遅くまでやればいいってもんじゃありません。

深夜のピット
深夜までつづくタイヤ交換の練習
右はリア担当の井田君 後ろ姿はASP.足立さん



 宿に着いたのは深夜2時過ぎになってしまった。
 明日は決勝。朝6時には宿を出る。興奮を冷まして床につく。



とりあえずここまで。つづきは「承」編。>>GO!



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