'99 鈴鹿8耐 岡田聡の独白

 一部割愛と段落付けを追加しましたが、基本的に岡田聡本人からの原稿をそのまま掲載しました。- 管理人

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 7月24日(土)本日も快晴。8時起床。午前中はSP4耐があるのでのんびりして、サーキットに入ったのは10時頃となってしまった。それにしても4耐は、国内ライセンスの祭典と言われるだけあって、いい体制を皆さん作ってますな。おそらく半分以上のチームが当チームより設備は充実しているでしょう。ただ一言、言わせてもらえれば、今、資金を使いすぎて昇格してから走れないなんてことがないよう、計画的に参戦してほしいものです。長く続けていればいいことあるからね。

 本日の最大イベントはピットワークコンテスト。当チームの車両は、一応何箇所か耐久向けにモディファイしてあるが、基本的にはスプリント用。多くは望めない。本当にエントリーしていいんだろうか? まして土曜のピットウォークの最中なので一番お客が多い時間。担当は全員、今年初参加だから、おそらくどのくらいギャラリーが来るかわかっていないハズ。
 いよいよコンテスト開始。キャンギャルは来るは、アナウンサーが来て場内放送はあるはで、さすがに面々もびっくりした様子。私はハラハラドキドキの見物。子供の運動会を見る気持ちはこんな感じかしらん。
 作業終了。タイムは59秒台。他のチームが10秒台ということを考えれば上々ではないが、私自身も楽しく見物させてもらい、同規模のチームのメカさんから「俺たちも出れば良かった」の声が。結局出たもん勝ちでしょう。あなたたちより当チームのメカのほうが度胸があっただけのことです。来年は競争しましょう。

 ピットウォークが終わるとスペシャルステージ。去年までは上位30台だったのが、今年は20台へ縮小。1台のみのタイムアタックは見ていてカッコいい。当然、当チームには関係がないのだが、いつかは走ってみたいものである。

 「8耐一新」というわりに、どこが一新されたのかよくわからないまま前夜祭。当チームは準備が遅れ、他のチームが撤収する頃にようやくタイヤ交換の練習が本格稼働。「もう疲れたから帰ろうよ〜」という岡田のささやかな希望をよそにタイヤ交換は続く。本日より強力な助人が二人参加。足立さんとHIDEさん。特に足立さんは耐久のベテランということで、内心ビクビクしていたのだが、私たちのつたない作業を暖かく見守ってくれ、時折アドバイスをしていただきました。それが実に的を得ていて非常に勉強になりました。おかげでタイヤ交換はピットワークコンテストの半分でできるようになりました。
 本日の消灯午前3時。みなさんお疲れさまでした。



 7月25日(日)午前6時起床。全然寝ていない割には一発で目が覚める。山形より応援の4人組とおしゃべりをかわす間もなくサーキット入り。
 雑用をこなしているうちに、あっという間にスタート進行。ところが私がパニック。携帯電話がなくなってしまい、あちこち探したり宿に電話してみたり。グリッドに行ってマシンを支えなければならないのに...。あれ、入れたハズのないカバンの中からなんか鳴ってる...。無意識にカバンに入れていたみたい。やはり地に足がついていないのね。相棒の待つグリッドへ全力ダッシュ!

 グランドスタンドにはこんなに人が入っているのは初めて見た。今まで華やかな舞台には縁がなく、立っているだけでフワフワ体が軽く、まさに夢心地。ウォームアップランの間、プラットホームで顔見知り選手たちと談笑。なぜか分からないが素晴しく気分が高揚している。戻ってきた松島選手からマシンを受取りいよいよカウントダウン。テレビでは見たことあったけど、このカウントダウンの大合唱にビックリ。
 
 スタート。いいスタートをきり15台前後(そう見えた)抜き去り40位くらいまでジャンプアップ。
 あっという間に松島選手の走行時間が終わり、いよいよお出ましとなるのですが、本日フリー走行をやっていないのでうまく走れるかな〜とか、トップ争いに絡んだらヤだな〜とか、様々な心配があったのですが、もう周回遅れになっているとのこと。あ、そう。

 コースインすると、全体的なペースは速いものの、さすがに予選の時ほどではない。みんなマシンをいたわって乗っているという感じ。ツーリングペースで走っていたのですが、プールでのトレーニングの効果かそれほど疲れず安定したタイムで周回。ペースアップしたいけど、当チームはタイヤ交換は2時間に1回なのでタイヤ君が熱でヘロヘロ。聞いてはいたがこれほどとは...。P-inのサインを確認しピットへ戻る。とりあえずプールへドボン。

 そろそろ体も冷めてきて、プールから上がろうとすると「転んでるぞ」。「ゲェッどこで?」と聞くとヘアピンとのこと。情報がいろいろ流れてはっきりしない。ただ5分以上戻ってこないので、再スタートはしていないようだ。正確な情報がないのがもどかしい。押している、との情報が入ってきたのがさらに5分後。損傷箇所も特定できないので一応の準備をして待つ。ただしヘアピンは一番遠いところ。そんなところから押して帰って来られるのかよ〜という感じ。もし怪我でもしていてヤバそうだったら置いてくるようにと伝令を出そうとすると、もう130Rまで来ているとのこと。やけに早くないか?という疑問をよそに、マシンも人間もボロボロになってピットへ帰ってくる。

 「走れそうですか?」の問いに足立さんは「なんとかなる」。キャブのオーバーホール、外装の交換、フロントブレーキの交換、みんな期待した以上の仕事をしてくれました。
 30分ほどでマシンは走れるようになった。もう順位は望めないが、燃えなきゃウソでしょう。みんなの思いを絶対ムダにはできない!!

 松島選手を少しでも休ませるため、私の走行を2回連続にする。次はガスチャージだけで出るよ、と言い残しコースへ。この回のピットアウトがこの日前半のクライマックスだったでしょう、間違いなく。もうペース配分も何もなし。マシンはすこぶる好調。でもガスチャージ後の2回目は長かった。10周目からはまさに自問自答「何故走るの?」それに対して頭の中はもうぐちゃぐちゃ。
 ところがその後、シールドを叩く音が。そう冒頭で話したことが現実になったのです。ただ雨といってもコース全体を濡らすほどではなく、判断に悩むところ。当人はピットへ戻る気はさらさらなく、いかに相棒を休ませるかのみ。

 そのうち本格的に降ってきたのでピットイン。少し早かったので松島選手の回復はどうかしらんと思っていたら、もうピット前で待っているではないですか。もう1回走る覚悟はしていたが、それを見て脱力感が襲ってくる。はいずるようにしてプールへ。テントの切れ目から振り込んでくる雨がやけに心地いい。後は次の走行まで何も考えずに休もう。信頼できる仲間にすべてを任せて...。
 コース上は雨があがり、レインタイヤで松島選手が苦闘中。だいじょーぶかよ、もうころぶなよー、という感じ。無事走り切りピットイン。

 コースイン。今回のレースでこのセクションが一番体力的にも精神的にもきつかった。というのは残り時間とピットイン数の関係で、今回と次の松島選手の走行を目一杯伸ばさなければならない。
 とにかくマシンよりも先に人間がヘロヘロ。大量の汗でグローブがぬるぬるになって、どんどん握力が落ちていき、ピットインのサインボードが見えた時はどんなに嬉しかったことか...。

 松島選手がコースイン。最後の走行にもかかわらずベストの2〜3秒落ちをキープ。たいしたもんです、まっったく。私はすでに5〜6秒落ちになっているというのに。

 午後6時30分過ぎ。松島選手ピットイン。カウルステーの緩みを直している間に、同じピットのモトキッズに先にピットアウトされる。順位ははるかに先に行かれているので、今後の人間関係(?)のためにもやっつけておかないといかんでしょう。樋口選手は予選での転倒の影響(ムチウチ)で走りに精彩がなく3周ほどでパス。振り切ったところで岡田ももう脱力しました。
 いよいよライトオン。疲れた頭に夕闇の中、浮かび上がってくるテールランプは言葉にならないほど幻想的。すべてがスローモーションに感じられるほど美しすぎました。いろいろな所で光っているストロボにも、なんだか励まされました。
 完全に日が落ちてからはガマン大会。エンジンの回転数も極力落とし、さらに安全運転へ。それはそうでしょう、規定周回数はあやしいし、あとはチェッカーだけが目標ですからね。このころサインボードも確認できなくなり、フラッグタワーの残り時間表示だけが頼り。周回ごとにプラットホーム、メインスタンドに人が増えているので、気分は最高であるが、数字が減っていくのがえらく遅く感じられること。
 数字が消えてあと1周。シケインまでくるとストロボがまぶしい。みんな待ってろよ! もう戻るゾー!
 チェッカーが暗闇の中に浮かび上がって見える。ヤッター、最後まで走れたんだ!!

 少しマシンをピット寄りに振りガッツポーズ。ギョッとするくらい多くのピットクルーの中からピンクのウエアを確認。パレードラップでマーシャルカーが見えたら不覚にも涙があふれてきて、どうにもなりませんでした。何故泣いているのかわかりませんが、いろいろな思いがゴチャ混ぜになり、もうスタンドに向かって手を振るのがやっとでした。レース前は絶対泣かない、というよりこれだけ感動するとは思ってもみなかったです。ですからパレードラップは感謝の気持ちでいっぱいでした。オフィシャルのみんなもありがとう。ただ手を振ることしかできない自分がもどかしい。
 筑波じゃ大泣きのままピットへ帰るハメになっていただろうけど、鈴鹿はコースが長くてよかった。スプーンの先でなんとか涙をおさえてピットロードへ。仲間が待っている。あ、ダメだ。また涙が。
 ピットへ戻ってビールかけが始まる。やったゼ!! 最高の瞬間だ! いたるところで喜びが爆発している。本当に最後まで走れてよかった。

 ひと段落して頭上に打ち上げられる花火。本当に祝福してくれているようだ。この花火、入道雲、灼熱の太陽。おそらくこれから何十年も過ぎて記憶が薄れていく中でも一生忘れないだろう。

 来年のことはまだわかりませんが、願わくば7月の最終日曜、みんなで鈴鹿のピットで花火を見たいものです。
 ゼッケン42を応援してくれた皆さん、ありがとうございました。
 今年、岡田が覚えた言葉は「感謝」です。本当にありがとう。

1999.8 岡田 聡



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